小学生と楽しむ芥川龍之介 日本名作入門。
芥川龍之介のお話は、是非絵本の読み聞かせをしてあげる事をお勧めします。なぜ読み聞かせがお勧めかというと、まず第一に言葉がとても美しいです。声に出して読んでみると、言葉の美しさとリズムの良さに不思議とどんどん引き込まれていきます。はじめから小説として小学生自身が読むにはハードルが高いかなと思いますが、絵本で読んでもらうと、とても身近なお話として楽しむことが出来きます。
それが、次は自分で読んでみよう、他のお話も読んでみよう…につながっていきます。まずは名作との出会いは是非、親が読み聞かせで作ってあげてほしいです。
ここからは私が、良いなと思った小学中学年から高学年向けの芥川龍之介の本を紹介したいと思います。ただ、とても残念なことに既に発売していないものもあるので、そういったものは、図書館などで探してもらえるといいかなと思います!
主人公の8歳の男の子の良平が村外れで始まったトロッコを使った鉄道工事の様子を見に行っているうちに、自分もやってみたいと思うようになる。そんなある時、土工の手伝いをすることになり、良平は土工たちと一緒にトロッコに乗せてもらう。初めは自分も土工の仲間にしてもらえた面白さしかなかったものの、ふとトロッコに乗って村からかなり離れたところまで来てしまい急に不安な気持ちになってくる…
本を読み進めていくうち良平にどんどん良平に感情移入させられます。新しいことが始まったワクワクドキドキという高揚した気持ちから、はっと気が付いた時には一気に不安とさみしさ、焦りを感じる感情のジェットコースターが読み聞かせをする親も、子供も一緒に感じていただけると思います。そして最後も〇。
絵本ではありますが、文体も原作通りで日本語の美しさも一緒に感じることが出来ます。渋い絵で好き嫌いが分かれるかもしれませんが、子供も読後は内容、絵ともに”あ~面白かった!”となります。
マティラム・ミスラという印度人の館を訪れた主人公の体験した不思議なお話です。魔術の不思議さにぐいぐい引き込まれていくと同時に、徐々に人間の本性が見えてくるお話です。ほぼ原文のままの文章なので、芥川龍之介の文章を楽しむことが出来ます。
絵は、日本画で岩絵の具を使って描かれており、独特の色合いや絵のタッチが魔術の不思議さと華やかさを一層引き立ててくれています。
子供はマジックや不思議なことが好きですから、楽しく読んでいただけると思います。同時に人間の欲深さを感じてもらえるのではないかなと思います。
自分でで読書をするのであれば、こちらもお勧めです。
ー杜子春(とししゅん)(作・芥川龍之介 絵・藤川秀之 新世研)
中国の小説を芥川龍之介がアレンジして書いた短編小説です。金持ちだった主人公の杜子春が一文無しになってしまい途方に暮れていると、不思議な仙人の鉄冠子が現れその助言通りにすると黄金を掘り当て都一の大金持ちになります。が、しかし杜子春はまた散在し一文無しに。杜子春は再び鉄冠子に助けてもらいますが、また同じ過ちを繰り返します。そして3度目に鉄冠子に出会った時、人間に嫌気がさしていた杜子春は仙人の弟子にしてくれと頼みます。そして様々な試練を受けることになりますが、最後に杜子春は自分が本当に求めていたものに気が付きます。
えん魔大王や地獄や鬼の残酷さが文章と絵によって伝わってくるので、恐ろしく迫力があります。子供には少し怖いかもしれませんが、絵本だからこそ味わえる感情だと思います。それで終わりではなく、その後の展開に救いと教訓を得ることが出来ます。
絵本ですが結構ボリュームがありますので、読み終わった後に、なんとも自分自身が恐ろしい旅から帰ってこれた安心感みたいなものを感じることが出来るのではないでしょうか。母親としては、本に出てくるような母のように子供に無償の愛を与えられるだろうか?と自問させられました。
1920年に芥川龍之介が児童向けに書いた小説ですので、子供にも理解がしやすいですし人生の教訓を得ることが出来る素晴らしい作品だと思います。
ーくもの糸 (作・芥川龍之介 絵・藤川秀之 新世研)